当たり屋行為とは

Yさんは走行中の自転車に故意にぶつかり、相手に慰謝料などを請求する「当たり屋」を行なっていました。Yさんはある日、狭い脇道を徐行していたSさんに当たり屋行為を行い、わざと転んで怪我をしたように振舞いました。

会社に事故を起こしたことがバレて欲しくなかったSさんは警察を呼ばずに、自分たちだけでの示談を申し出ました。Yさんはそれを快諾し、Sさんは後日連絡してほしいと電話番号などの連絡先を教えて、事故現場を去りました。

後日YさんはSさんに対し、治療費および慰謝料として150万円の高額な金額を請求しました。
Sさんは病院での診断書や治療実績を求めましたが、病院での治療は確認できず、さらにYさんは「ヤクザの知り合いがいる」などと脅し、Sさんに請求通り支払うよう強く求めました。

Yさんからの請求が不満だったSさんは、Yさんが当たり屋だった可能性を考慮し、警察に相談しました。後日Yさんは警察によって事情を聞かれることになりました。

交通事故を報告しなかった場合

交通事故の中には、警察に通報しなければ事故そのものが発覚しない事故多く、社会的地位の高い人や、交通事故を起こすと会社などで大問題となるなど、できれば事故を他人に知られたくないという人もいます。

ですが、交通事故を起してしまった場合警察への報告義務があり、怠った場合は道路交通法違反(72条1項，109条10号)となり罰せられます。

事故を知られたくない人の心につけこみ、故意に事故を起こして（または起こさせて）、警察に知らせないことを前提として、高額な治療費や慰謝料、示談金などを要求する行為を行う人がいます。「当たり屋」と呼ばれる人または行為です。

当たり屋行為の罪

詐欺罪

当たり屋行為はわざと車などと接触して、怪我をしたなどと言って、実際には必要の無い治療費などを請求することです。実際に病院に行って医師の診断書や請求書に基づいた金額を請求する場合は、詐欺罪とはならない可能性が高いですが、当たり屋は金銭を得ることを目的としての行為のため、実際には怪我をしていないまたは軽症で、病院に行かずに金額を要求してきます。証拠がないにもかかわらず治療費として現金を請求し、相手を騙して金銭を受け取ったことになるため、詐欺罪（刑法246条）となる可能性があります。

恐喝罪

当たり屋は相手の弱みにつけこんで金銭を受け取るのが目的で、その際に脅しなどが行われた場合は、恐喝罪（刑法249条）となる可能性があります。恐喝は暴行・脅迫によって相手方を怖がらせ、財物を出させた場合に成立します。

事例で記載したYさんように、「ヤクザ（暴力団）に知り合いがいる」などと威圧し、相手を怖がらせた場合も当てはまります。
警察に通報するという正当な権利行使であっても、脅迫となり恐喝罪が成立する場合もあります。

当たり屋の弁護活動・弁護士の対応

詐欺罪の法定刑は10年以下の懲役、恐喝罪の法定刑も10年以下の懲役で罰金刑は定められておらず、起訴された場合には刑事裁判が開かれます。初犯で件数が少なければ執行猶予付きの判決を獲得することも可能です。

もし検察官が事件を起訴しなかった場合には刑事裁判は開かれず前科も付きません。検察官が事件を起訴しないケースとは、実際に犯罪がなかった場合や、あえて国家が刑罰を科す必要がないと判断した場合などです。真犯人発覚した場合や証拠などが不十分で犯罪が立証できなかったという場合、起訴猶予などが該当します。
起訴猶予となるのは犯罪が非常に軽微であったり、既に当事者間で事件を解決している場合です。

示談が成立したことで起訴猶予となる可能性がありますが、示談が成立していても事案が悪質と判断された場合は起訴されることがあります。
当事者間で示談をしようとせず、刑事事件に詳しい私たち弁護士にご連絡いただき、見通しや解決方法などについてご相談ください。