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制作会社・クリエーターの残業代請求
制作会社・クリエイターの残業未払
ITの普及により、制作関連の仕事が増え、会社も増えましたが、労働実態は過酷なものであるケースが報告されています。
制作関連の仕事には、プログラミング、WEB、広告、出版、アニメ、ゲーム開発、放送、映像、グラフィックなどがありますが、ひとつの作品を完成させるゴールが明確な仕事でもあり、業務遂行の手段や方法、時間配分などを労働者であるクリエーターの裁量にゆだねられることがほとんどです。そのため裁量労働制という給与体系で働く人が多く、残業をしても残業代が支払われないことが多い職種です。
業務の性質から、発注する側(クライアント)の都合によって無理な要求が多くなりがちな仕事でもあり、フォローに追われて徹夜をする場合もあり、残った仕事は休日に対応することもあります。
法律の上では、従業員として働く人のうち、「管理監督者(労働基準法41条2号)」である人には、基本的に残業代を支払う必要はありません。しかし、管理監督者に該当する場合でも、深夜10時以降の深夜割増手当は支払う必要がありますが、このことを知らない人も多いのが現状です。
制作関連の仕事に就いている人の中には、「給料は年俸制で決まっているから、残業代は含まれている」「裁量労働制で採用されているから残業はでない」と会社から説明され、サービス残業をしているケースも少なくありません。
制作会社では納期を守るためにもサービス残業が当然、空気を読んでほしい…というような業界独特の風潮があるようですが、法律を違反している風潮に従う必要はありません。
雑務も多い小規模企業
制作会社は下請けにどんどん仕事を下ろしていくことが多く、比較的小規模の会社が多数あります。小規模な制作会社はワンマン経営になりがちで、制作職(クリエーター)として働きながらも、社内システム環境の構築や管理、事務的な作業や雑務も行うことがあり、残業時間が膨らんでいきます。にもかかわらず残業代や深夜勤務手当などは支給されず、健康保険や年金への加入すらないケースもあります。また、一度入職すると退職願を受理してもらえず、退職を先延ばしにして機会を失わされることもあります。
制作関連の仕事の残業代請求
制作関連の仕事は華やかで、やりがいのあるモノづくりの仕事ではありますが、残業代が支払われないサービス残業ばかりを行なっていては続けることができません。また良い作品も生み出すことが難しくなるでしょう。最近は従業員が制作会社に対して残業を請求するケースも増えました。訴訟提起や労働審判申立をする例が急増しています。
制作会社会社ではタイムカードなどで労働時間管理をしていないこともあり、労働時間の証拠を集めたり、時間の立証が困難であることが多くなります。また、会社がタイムカードなどの提出をしてくれなかったり、廃棄したと主張するなど、協力的でない会社があります。
タイムカードが無い場合でも残業代請求が認められた事例
それでも過去には、労働者が残業代を勝ち取ったケースがあります。
制作会社に対する残業代請求で、制作会社側が労働時間を記録した「月間作業報告書」を、会計処理が済み次第処分しているため存在しないとし、また、従業員が作業報告書を作成しなかったとして、訴訟では月間作業報告書を提出しませんでした。
しかし、制作会社が労働時間管理にについての資料を提出しない場合、時間外労働等の認定方法について次のように判断されました。
制作会社が労働時間管理のための資料を合理的な理由もなく廃棄したなどとして提出しないという状況が認められる以上、公平の観点から、推計計算の方法により労働時間を算定する余地を認めるのが相当であると判断されたのです。
その上で、従業員が従事していた業務は、それ自体、相当な時間と作業量を要する業務であったと推認されること、また、従業員はそのスケジュールに照らし相当に多忙であったと認められること、さらに、従業員のタイムカードに打刻のある日時が全体の平均値から逸脱しているということもできないことといった事情が判断の基準とされました。
ある従業員はタイムカードの打刻のない日について、月ごとに算出した始業時間および終業時刻の各平均時刻をそれぞれ始業時刻、終業時刻として推計。他の従業員に関しては、タイムカードの有無にかかわらず、始業時刻の打刻がない部分は一律に所定始業時刻である午前10時とし、終業時刻の打刻がない部分については月ごとに算出した各平均終業時刻(タイムカードが存在する場合)または本件請求期間のうちタイムカードが存在する期間の平均終業時刻(タイムカードが存在しなかったりほとんどない場合)をそれぞれ終業時刻として推計し労働時間を認定しました。
結果的に従業員らの残業代請求が認められたのです。
制作会社側の労働時間管理がずさんで資料が提出されない場合でも、信頼性のある情報や証拠を持って裁判所を説得すれば、推計計算による方法でも労働時間が認定され、残業代請求が認められる可能性があります。
制作会社で仕事をする人が未払残業代を請求するために重要なポイント
労働時間の証拠を集める
制作会社側に労働時間に関する客観的資料、例えばタイムカードや月間作業報告書の提出を求めることが可能ですが、会社は提出を拒否することも多いため、自分が管理している手帳や、日記、ノート、メールの送受信記録、セキュリティカードの記録などを残しておきましょう。客観的にも信用のある労働時間の証拠をしっかりと用意しておくことがポイントです。
固定残業代などが支払われていた場合でも未払いが発生している可能性があります
会社が固定残業代であると主張しているものの中には、法的に無効なものもあり、残業代の全額支払いが認定されるわけではありません。会社側から残業代は支払済みであり、法的にも有効であると伝えられても、就業規則や給与明細の内容などを確認してください。弁護士にご相談頂ければ判断致します。
本質的な管理監督者であるか
制作会社側から管理監督者には残業代を支払う義務が無いと主張されても、本質的にどうであったかが重要です。管理監督者と主張するためには、報酬や人事権の有無、労働時間裁量の有無、など幅広い権限があるはずです。制作会社側から管理監督者であると言われても、実際がどうなのかを判断することが、残業代請求可否の目安となります。
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