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適切な後遺障害認定を受けられる人・受けられない人
適切な後遺障害認定を受けるために必要なこと
後遺障害等級の認定基準を把握する
労災の後遺障害は1級から14級に分類されていますが、適切に後遺障害認定を受けるために、下記のことを意識しておきましょう。
後遺障害等級の認定基準を理解する
労災の後遺障害等級の認定基準について正しい知識を身に着けてください。労災によって症状が残っていても、症状が後遺障害認定基準に合致していなければ後遺障害として認定されないことがあります。
自分にどのような後遺障害が残ったのか理解できていない場合、医師に後遺障害診断書や意見書をどのように作成してもらいたいのかを伝えることができません。
そして実際に等級認定の通知を受けたときも、その結果が適切なのかどうかも分からず、実際よりも等級が低くなっていても気づかないまま低額な給付金を受け取ることになるかもしれません。
後遺障害を的確に証明する
後遺障害認定を受けるためには、適切な後遺障害認定基準を証明する必要があります。重い症状が残っていても、それが事実と認められなければ、労災による後遺障害としては認められません。
後遺障害の症状は検査を受けて立証しなければなりません。レントゲンやCT、MRIなどの画像記録は客観的な記録として重要で、骨折や組織、血管異常など、明確な所見が撮影出来れば後遺障害認定を受けやすくなります。
そして、労災事故とそれらの症状との因果関係を証明する必要もあります。
後遺障害基準となる症状が見られても、それが今回の労災とは関係の無い事故などによって発生したと判断された場合は、労災の後遺障害認定を受けることが出来ません。労災前からの「既往症(これまでにかかったことのある病気)」がある方の場合は特に問題となり、既往症によって症状が発生している場合は労災による後遺障害とは言えず、認定が受けられません。
(※ 多少の既往症がある方でも労災の後遺障害として認定を受けられる事例はあります。)
持病の中には自覚症状がないものがあり、本人も労災申請を行ったときに知ったということもあります。そういった場合は既往症がどこまで影響しているのかを自分が知り、後遺障害認定に影響を与えるものでないと言えるなら、それを説明する必要があります。
もし画像検査などによって既往症ありと判断されたら、後遺障害認定の非該当とされないように、前もって労基署に説明出来るよう準備をする必要があります。
後遺障害認定を適切に受けられる人受けられない人
労災に遭って後遺症に苦しんでいるにもかかわらず、後遺障害認定を受けられる人と受けられない人がいます。両者の違いはどんなところにあるのか、傾向を記載しておきますので、ご参考になさって下さい。
後遺障害認定基準を理解している・理解に努めている
後遺障害認定を受けられる人は、労災の後遺障害認定基準を理解されている、または理解しようと努められています。自分の後遺症がどの等級のどの後遺障害に当てはまるのかを正しく理解されているため、該当の後遺障害を立証するために効率的に情報を集め、有効な資料を的確に収集することが可能です。また、労基署との面談の際にも症状、そしてポイントを適切に説明されています。
自分の後遺障害の内容を理解できていなかったら、どのような検査を受ければよいのか、労働基準監督署にどのようなことを明確に伝えればよいのか分からないため、証明が的外れになってしまうことがあります。ご自身お一人で労災認定基準の内容を正確に理解することが難しい場合には、労災事件に強い弁護士に労災申請をご依頼すると効果が期待できます。労基署は判断内容にもとづいて後遺障害認定申請を進めるため、医師の適切な検査結果があれば、結果的に高い等級の認定を受けやすくなります。
適切な検査を受けている
労働災害で後遺障害認定を受けるためには、必要十分な検査を受けなければいけません。認定する機関が判断に迷わないようにしっかりとしたデータが必要になります。
医療機関の選定
そのためにまず大切なのは「検査をしてもらう医療機関の選定」です。精度の高い医療機器を保有していることはもちろん、労災の後遺障害等級認定を受けるにはMRIやCTなどの画像検査が重要とされています。医療検査機器には性能に違いがあり、症状を有効に立証するためには、できるだけ精度の高い医療機器を導入している病院で検査を受け、細かな情報を得ることが必要です。
具体的には、MRIは「テスラ(T)」という単位で精度を表現しますが、多くの医療機関が持つ1.5Tよりも高解像度で表示が可能な3TのMRIを導入している病院もあります。高い解像度の機器の方が所見がはっきりと見え、異常部位も明確に撮影されやすくなります。反対に、解像度が低いMRIで撮影してもらった結果、異常が見られないと判断されてしまうと後遺障害等級認定を受けられなくなります。
必要な検査をしてもらう
医療機関のデータで後遺障害を立証するためには、MRIなどの画像検査だけでは不足していると判断されることがあります。
後遺障害には神経症状の後遺症もあり、CTやMRIで撮影を視覚的に異常が見られず、明確な他覚所見を得られないケースがあります。画像で他覚所見が確認できないことで後遺障害等級認定を諦めてしまう人もいらっしゃいますが、撮影以外の検査で異常を証明できることがあります。例えば筋電図検査や腱反射テストなどの神経学的検査によって症状を証明できた方もいらっしゃいます。この検査を知っているのと知らないのとでは、後遺障害の認定に大きな差が出ます。諦めずに医療機関に問い合わせてみましょう。ケースに応じた適切な検査を受けることで、労基署に適切に判断してもらった結果、後遺障害等級認定を受けやすくなります。
適切な医証を獲得している
後遺障害診断書
後遺障害等級認定申請をするときには、労災用の後遺障害診断書が必要です。後遺障害認定審査には、診断書の記載内容が大変重視されているため、医師に作成を依頼するときには慎重に対応しましょう。
データや知見の記載は医師の判断に任せることになりますが、労災を申請する患者としても医師に伝える内容によって書類の正確性に影響を与えます。「どのような自覚症状があるのか」は必ず医師に理解してもらう必要があります。医師はデータと自身の見解を記載するため、自覚症状については患者が伝えなければ記載されません。
医証(後遺障害診断書以外)
医証は後遺障害診断書以外にもありますので、それらの書類もできるだけ多く集めて下さい。例えば、医師による意見書も有効となります。難しい症状がある場合、また、立証が不十分であると指摘されそうな場合は、診断書記載内容以外に、主治医としての意見を書面にまとめてもらって提出すると、具体的な症状や障害が伝わりやすくなり、効果的な証明書となる場合があります。
適切な治療を受けている
的確な後遺障害等級認定を得るには、治療の受け方や通院方法なども重要です。忙しいから…面倒だから…などと言う理由で通院せず、2週間に1回、1ヶ月に1回程度しか病院に行かない人もいらっしゃいますが、このような方は後遺障害等級認定を受けられない可能性が高くなります。通院頻度が低いということは、治療の必要性がないと判断されるからです。それほど重症ではない、完治している可能性があると判断されます。後遺障害等級認定を受ける人は治療を必要としているはずですので、さぼらずに必要な治療を受けるようにして下さい。
労基署による調査への対応方法について
労基署に対する申請方法や調査への対応も審査に影響することがあります。申請をする時に、後遺障害診断書と最低限の検査結果、そして給付金の申請書しか提出しない人もいらっしゃいますが、できればそれらに追加して、後遺障害に該当することを説明する理由書や意見書などを提出するようにしましょう。附属書類もしっかりと提出出来ている人の方がが認定を受けやすくなります。
労基署の面談が行われる際にも、質問に対してしっかりと回答を行い、後遺障害が残っていることを適切に説明できる人の方が後遺障害が認定されやすくなります。労基署への対応が不適切であったり不十分な場合は、後遺障害の認定が下りない可能性があります。
却下されたときの審査請求や再審査請求の知識
労災の後遺障害認定を却下され、それらが適切でないと判断した時は、「審査請求」や「再審査請求」ができますが、審査請求は同じ組織である、労災保険審査官や労災保険審査会に依頼するため、判定が覆る可能性は低いです。
その場合は訴訟をすることで司法機関である裁判所の判断にゆだねることが可能です。事実、後遺障害認定基準が司法と行政とで多少ずれていることもあります。そこで、労基署などの行政機関において後遺障害が認められないときは、訴訟を提起して後遺障害認定を受けられる可能性もあるため、「再審査請求」で認められなくても、諦めないようにして下さい。
時効や期間を知っておく
労災の申請には時効があります。
後遺障害に関する障害補償給付は基本的に労災事故発生後5年間で、わずか2年で時効になってしまう給付もあるため、後遺障害認定を受けるには、その期間内に申請を行わねばなりません。
また、労基署などの行政機関の判断に対する審査請求や再審査請求、訴訟提起などにも期間制限が設けられています。後遺障害の認定を受けるには、これらの期間制限をひとつひとつ把握して、期限が過ぎてしまい、受けられたはずの認定が受けられなかったということにならないよう、予めスケジュールを考えて手続きを進めなければなりません。
そうしなければ、認定の可否を受けるどころか、認定申請そのものができなくなってしまいます。
後遺障害等級認定が確定後は会社への慰謝料請求を検討
後遺障害等級認定が確定すると、等級に対応した労災補償を受けられます。
しかし、現実的には労災補償だけでは損害を全てまかなうことは難しいです。労災事故により被った精神的な損害や後遺症、死亡事故により将来得られるはずだった逸失利益などの損害は会社に対して慰謝料など損害賠償請求をすることが可能です。
会社と労働者は労働契約を結ぶことが義務付けられており、その概要は、労働者が会社に対して労働力を提供し、その対価として給料を払ってもらう契約となっています。会社は労働者に働いてもらって利益を得るため、労働者が事故などに巻き込まれないよう、安全に配慮する義務があります。(「安全配慮義務」)
会社が安全配慮義務に違反した場合、労働者は会社に対して慰謝料など損害賠償を請求することができます。
損害賠償の請求については、法律的な専門知識が必要ですので、労災事故や死亡事故についてのご相談は、労災事故専門の弁護士にご依頼下さい。
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